銀歯と金属アレルギー
- 2023年5月2日
- 審美
こんにちは。目黒まついデンタルクリニックです。
今回は銀歯とセラミックについてお話します。
皆さんは「銀歯」・「セラミック」と聞くとどのようなイメージがあるでしょうか。
日本では保険診療で当たり前のように扱っている銀歯ですがどのような特徴があるのでしょうか。
銀歯とは
歯科において現在使われているまたは過去使われていた銀歯にはじつは種類があります。
アマルガム・金銀パラジウム合金・チタン合金などがここに挙げられます。
1つ1つご説明します。
アマルガム
銀・スズ・亜鉛・銅などに加え主に50%水銀でできた銀歯で現在ではほとんど用いられておりません。ただ過去の歯科治療においては使われていました。
アマルガムの成分の50%を占める水銀には毒性があり、人体へ悪影響をもたらす化学物質として広く認識されています。
アマルガムによる詰め物は、口の中で長い時間をかけて少しずつ腐食し、水銀が体内に蓄積されていくことで人体に悪影響を与える可能性があるため、前述のとおりほとんど用いることがなくなりました。
1987年にスウェーデン政府が妊婦にアマルガムの詰め物をしないよう警告を発表し、1998年にはイギリスでも同様の発表がされ、スウェーデン、イギリスでは使用禁止になりました。
日本ではアマルガム治療は2016年4月の歯科診療報酬改定で、保険治療から外されました。現在では教科書にもアマルガム充填の方法も載っていません。
金銀パラジウム合金
金銀パラジウム合金が現在の歯科におけるいわゆる銀歯と呼ばれるものです。被せものや部分的な詰め物で用いられます。金:12%、パラジウム:20%、銀:約50%、銅:約10%の組成で、特にこの合金のなかのパラジウムが1つ問題で、「リンパ球幼若化テスト」という金属アレルギー検査では、約半数の人に陽性反応が出る金属です。
ドイツやスウェーデンなどの予防先進国では、金銀パラジウム合金内の成分が金属アレルギーなど体への悪影響をおよぼす可能性があるとして歯科での使用を禁止しています。
金銀パラジウム合金は先に述べた、金や銀のほか銅やパラジウム、亜鉛、ニッケルなどさまざまな金属が配合されています。そのため口の中で腐食し溶け出しやすいのです。
もちろん金銀パラジウム合金がすべて悪いというわけではなく、メリットもあります。例えば、金銀パラジウム合金自体は固いのでそのもの自体は割れたりすることはないこと、保険診療で用いられるため比較的安価であることが挙げられます。
もちろんデメリットもあります。例えば熱の伝導性が高いため、しみる症状がセット後起こりやすいこと、劣化により歯と金銀パラジウム合金との間に隙間を作ること(隙間を作ることにより、虫歯の菌が入り、二次カリエスのリスクがあるということ)、合金のため溶けだすことで金属アレルギーのリスクが起こるということ、かみ合う反対側の歯のダメージがある、肩こりや疲労に繋がるということなどが挙げられます。
チタン
インプラントにも用いられるチタンですが、最近は被せものでも一部用いられています。大臼歯(奥歯)の被せもののみに使われています。他の金属系統の詰め物・被せものと比較し、金属アレルギーの可能性は低いものの、適合が甘く噛み合わせが高くなることが起こりうるというデメリットもあります。また保険適応になったのが最近のため、今後のまた新しくメリット・デメリットが出てくる可能性があります。
金属アレルギー
金属アレルギーという言葉はみなさま聞いたことあると思います。ピアスやブレスレットでよく耳にすることがあると思いますが、歯科で用いられる金属も1つの原因になってしまうことがあります。
金属そのものにアレルギーがあるわけではありませんが、唾液にイオン化した金属が体内に取り込まれることでアレルゲン(抗原)となり、発疹などの症状を引き起こします。
つまりお口の中の金属アレルギーの原因は、先に述べた口腔内の金属が溶け出ることが大きく考えられます。
金属アレルギーの症状
口の中に入れた金属による金属アレルギーの症状には何があるのでしょうか。
口腔内炎症
まず挙げられるのが口腔内の炎症です。具体的には口内炎や舌炎がこの炎症の1つです。
口腔内に入れている銀歯の金属が溶け出てイオン化し、抗原となり炎症を引き起こします。
他には口唇にできる炎症や口角に炎症が出る場合もあります。
掌蹠膿疱症
手の裏や足の裏に膿が溜まった水疱(水ぶくれ)ができる疾患です
口腔内金属のイオンが溶け出て全身に回ることから起こります。膿が溜まっているため痛みを伴うことがあります。
接触性皮膚炎
膿が溜まる掌蹠膿疱症とは違い、全身の皮膚の部分がただれることをこの接触性皮膚炎といいます。
今挙げたように口腔内金属が症状に繋がることがあり得ます。ただ金属アレルギーは遅延型の反応なので入れた当初で反応が出なくても体内に蓄積し、全身を巡るので数年後に反応が起こることがあります。
金属アレルギーの治療
もちろん口腔内に金属があるからと言ってすぐに金属アレルギーと直結することはありません。1つの要素ではあります。
ただ確実に金属アレルギーが診断するためには皮膚へのパッチテストが大切になります。どの金属が合わないのかをチェックしたうえで判断すべきです。もしパッチテストの結果でお口の中に含まれる金属成分と合致するのであれば治療を考えるべきですし、もし違う場合はアクセサリーなど皮膚科の範囲にはなってきます
金属を除去した場合の案としてセラミック治療(メタルフリー治療)が挙げられます。
セラミック治療とは
従来の金属の被せものと違い、セラミックという非金属製の陶材を用い、被せものや詰め物を作っていきます。以下にセラミックの利点をご説明します。
天然の歯に近い審美性
白色の詰め物・被せもののため審美性に優れています。プラスチック材料のような吸水性や変色をしないため天然の歯に限りなく近い再現性を持ち合わせています。
神経治療後の前歯や被せもので形を整えることができたり、自由度も高いのもセラミック治療のいいところです。
経年劣化が起こりにくい
変色がないなどまた金属のように隙間が生じにくいということはやり直しのリスクを下げることができます。
金属アレルギーの方にも使える
先に述べた金属を使っていないので金属アレルギーの方でも安全に使用できます
二次的な虫歯のリスクを下げることができる
金属のつめものに関しては経年劣化で歯との隙間を作り、そこに汚れないしは菌が入り込み、二次カリエスのリスクを高めてしまいます。
それに対しセラミックは表面性状はよく、金属と比べて隙間を生じにくいこと、また精密な型どりを行うことで適合が良い詰め物・被せものを作成することで予後が良くなっていきます。
もちろんセラミック治療をしたからといって一生もつものではありません。大事なのはメンテナンスと日々のセルフケアです。
目黒まついデンタルクリニックでは、セラミック治療の精度を上げるための方法として、口腔内スキャナーやシリコンという材料での型どり方法を用い、装着するセメントもこだわることで、より長持ちできる精密精巧なものをみなさまにご提供できればと考えております。
またセルフケアで役立つ方法や定期的なメンテナンスのお手伝いを心掛けて、どの被せもの・詰め物でも長期予後が見込めるようにいっしょに作り上げていければと思っております!